認めたくないものだな自分の若さ故の過ちというものは・・・・



ときめき回顧録

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・まえがき

本稿を執筆しようと思った動機は、筆者を含めて最近、ネットもゲーム誌もユーザーもコナミも これに引導を渡しつつあるので、この場を借りてここ数年のブームとは一体なんだったのかを、 振り返ろうというものです。個人的な体験談が中心になることをお断りしておきます。 「まだ終わらんよ!」(エゥーゴ クワトロ・バジーナ大尉)といっている方もおられるでしょうが、 そう言う方はここ1.2年の新しいファンか、ギャルゲー初心者が大半なのではないかと思います。 gooかyahoo!あたりでどこかのファンページを検索してください。まだまだ、あなたの盟友はいます。

これはかつて、「ときめき」(コナミの公式な呼称)に膨大な時間と浄財、情熱を提供した男の 手記である。

第1章

1994年5月

PCエンジン版発売。これがすべての原点であり、多くの人間の道を誤らせることになろう
とは誰が想像したであろう。ソフトは瞬く間に完売した。筆者は7月頃これの中古ソフトを
ファミコンショップで発見したが、当時PC−ENGINEをもっていなかったので、断念した。
それ以降nifty-serveのゲーム会議室は、しばらくときめき一色だったという。当時のことを
しりたい方は「超クソゲー」を参照のこと。雑誌でもじわじわと盛り上がりをみせはじめ、
PCエンジン市場は、一気に回復した反面、もはやギャルゲー以外のゲームのでる幕は殆ど
残されていなかった。筆者はゲーム雑誌のエッセイや記事で、紹介される度に絶賛される
ときめきに文字通り胸をときめかせたものだった。ソフトとほぼ同時にドラマCDが発売さ
れている。が、持っているけどまだ聴いていません。

同年秋

ザ・スーパーファミコンという雑誌に「ときめきメモリアルが本当の面白さは男性にしか
理解できないようにアンジェリークも女性にしか本当の楽しさがわからない」という文が
掲載される。筆者はアンジェリークはやったことがないので、よくわからないが、ときめき
が楽しいと感じるのは、ゲーム部分よりも、下校イベントやデートにおいて、会話の行間を
読む作業を無意識にしているせいではないかと思われる。つまり多くのプレイヤーがファミ
コン時代に培った想像力を存分に働かせているのではないかということである。
そのおかげで、今では物足りなさを感じるイベントや会話も、プレイヤーひとりひとりが
心のなかで補っていたのだろう。

PSとSSでも発売されることが発表されると、評判は聞くが、一体どんなゲームなのかと
世間の期待はいやが上にも高まっていった。PS初期の電車の宙づり広告にも「まずはライ
ムをやって、春にスーチーパイをやって、秋にときメモをやって・・・」と書かれている。
余談だが、今こんな事を言ったら間違いなく世間にも一般ユーザーにも迫害されるな。

1995年春

PS雑誌にもときめきを期待する読者の投稿が掲載され、声優のインタビューや
キャラの情報が乗り始める。今で言う、ToHertのようなものだろう。
ソフトのないPCエンジン雑誌にも読者の投稿欄にときめきのことが載らないことはなかった。
この時期ラジオドラマが開始される。内容はうる星やつらのようなものだが、ひとつ異なるのは
主人公が好きなのはただ一人、藤崎詩織である。あとは、女の子の方が勝手に好きになるというパタ
ーンである。でも、ラスト近くでそうなったり、次の話に出なかったりするので、それが後で
尾を引くことはない。昔の典型的なラブコメである。本編は少女漫画だと言われたことがあったが
これは少年漫画のノリである。これの名物はなんといっても主人公の一人芝居につきる。もてない
中高生の男が日頃抱いている理想的な異性の姿と恋愛を一人ごつのである。(一人ごっつにあらず)
筆者も昔の自分の姿のようで気恥ずかしかったことを覚えている。この番組のプロデューサーであ
るおたっきぃ佐々木という人物の著書によると、昔、「くりいむれもん」を夜、布団を被って見て
いたという過去の体験からそんな恥ずかしい感覚をよみがえらせるドラマをつくりたかったと書か
れている。その試みは大成功だったといっていいだろう。だた、あかほりさとるを起用したのはい
ただけない。弟子の花田十輝が脚本を書いた回は面白かったけど。詩織に告白するまでが前半の6
話なのだが、それ以降はどうも無理矢理延長した感がある。向こうからもOKの返事を貰ったのだ
から本来続けようが無い筈であるがどうだろう。告白はゲーム通り卒業式にするべきだったと思う。
そう言う訳なので6枚目のCDからは持っているけど、聴いていません。

同年夏

ゲーム批評でときめきを絶賛する特集記事が載り、当時の編集長、桝田省二氏、ソニーの女性社員や
吉原正訓氏などの座談会が掲載される。男性諸氏の(ゲームとしての)絶賛と、紅一点の女性の冷
静な分析と現実との比較で後にも先にもここまで公正に評論できた記事はないものと思われる。
このあとの分析や評論は主観が入り交じった、ライターの思い入れで書かれた記事や多くは女性や
ギャルゲー嫌いの読者が頭ごなしに軽蔑した投稿が多く公正さに欠ける。もっともあのグッズ攻勢や
それに群がる人間は見ていて気持ちのいいものではないだろうが。
特集記事の最後に「かつてドラクエでマニアから一般にRPGの楽しさを教えてもらった様に、
この「ときめきメモリアル」が登場したことで、「恋愛育成シミュレーション」というジャンル
が我々に確率されたことに拍手を送ろうではないか」と締めくくられている。この時点でこの言葉に
異論を唱えるものはあまりいなかっただろう。筆者もこれと同意見である。
コンシューマ恋愛ゲーム存亡の危機にある、今こそこういったエポックメイキングなゲームがもう一度
出て欲しいものである。

同年10月

待望のPS版発売。限定版は初日に完売。最高3万近くのプレミアがつく。ソフトは累計50万本
以上売れたらしい。ギャルゲーブームの始まりである。しかし、筆者はこの当時PSは所有していな
かったので、指をくわえて見ていた。このソフトの評判は皆さんの知る通りである。
これにオープニングアニメーションがついていたため他のギャルゲーもこれに追従するようになる。
同時期、エヴァの放送開始される。両方同時にはまっていた人も多かっただろう。ブームが去った
あとで悪く言われ出したのも似ている。

同年12月

「ときめきメモリアル対戦ぱずるだま」がゲーセンにお目見えする。筆者はこれが、ときめきの初め
てのプレイである。だれを選ぼうとインストラクションカードのキャラ紹介をみる。・・・・・・・
・・・これだ!と選んだのは、かの紐緒結奈嬢だった。そう私はこの女性を見初めたのである。(笑)
しばらくは紐緒女史を使っていたのだが、たまには別のキャラを使おうと思い再びインストカードを
見る。次に選んだのはヒロインの藤崎詩織だった。私のお気に入りはこの時点で決まってしまったのだ。
 今だからいうけど、カードに掲載されていた11人の中では好みのタイプはこの二人しかいなかったの
である。やっぱり一目みてかわいいと思えなかった娘は二.三人を除いて最後までかわいいとは思えなか
った。キャラについては後述する。このゲーム、一時はものすごく盛り上がったものだ。対戦は自分の
お気に入りを使うから燃えること燃えること。弱いとわかっていても文字通り根性でカバーして使って
いたし。でも筆者は元来パズルゲームは苦手だったので、クリアする事はできなかった。

1996年3月

日本橋のソフマップの店内で、ドラマCDが流されていたのを偶然聴く。なんだがうる星やつらみた
いなドラマだなあという印象だった。あまりにも昔のラブコメ漫画風だったので、あまり、いい
印象がなかった。詩織はなんとなく、同性に嫌われていそうなだと思った。因みに伊集院は想像
していた声より女っぽかったので「これはもしや」と思ったが案の定・・・だった。

1996年5月

転落への第一歩。当時PSを持っていなかったので、日本橋でPC版を購入。お代は6480圓也。
当時ベーマガで「ときメモ論争」なるものがあり、そのことによって多少の情報は仕入れていた。
論争の中身はというと、「散々浮気をしまくって最後は俺も○○さんのことが・・・なんておかしい」
「ゲーム中はまだつきあっていないからべつにいいんじゃないか」「誠意を見せないと告白されない
キャラもいる」などといったもの。ときメモ批判の尖兵となったのはやはりというべきかイヤミな
女性読者だった。筆者はあの爆弾システムは無かった方がよかったのでは無いかと思う。そのせいで
好きでもないキャラにも機嫌をとらなくてはならなくなり、それが苦痛になって、嫌われるキャラが
多く出てしまったのだから。

以下の文は初めてプレイした2日間の感動と衝撃をできる限り、忠実に回想した文である。

初プレイは説明書も攻略本も見なかったため、全員に嫌われた。
曰く、「早乙女君の方がよかったな」「そんな格好でよくここに入れたわね。」「うるさいわね、
あっちいっててよ」「何か用?用がないなら切るわよ」「なんだよ」「誰かと思えば、脇役君ね」
などである。あまりのひどさにテレビのボリュームを消してしまった程である。
何故嫌われているのかわからなかったので、説明書を読むがわからない。仕方なく、PC版に
近いとされる、SFC版の攻略本を購入し、作戦を立ててからやり直すことにした。攻略本に
よれば、一番攻略が難しいのが詩織だと書いてあった。ならば、敢えてそれに挑戦してみようと
一番槍の相手は詩織と決定。攻略本によると、多くのキャラを出しすぎないように、パラメータ
を2.3に絞って上げて行き、3年目から苦手教科を上げて行くのがよいとある。血液型は、自分の
AB型と相性のいいB型にしようかと思ったが、いかにゲームでも、恋愛にそこまで他人の力を借
りるのはなんだか嫌だったので、A型とした。部活も同じ理由で不利を承知で、別々のクラブを
選んだ。イベントをすべて発生させる為に、攻略本を参照しながらプレイを進める。やはりクラ
ブに所属していると、パラメータの上がりがよい。下校イベントは最初は断られ続けたので、パ
ラメータがあがるまではと、ひとりで帰っていた。そんなある日、いつもなら事務的に「さよなら」
といわれるだけだったのが、「さよなら・・・」とか細い声に変わっていたのである。これはいかん!
というわけで、というかそれにグラッときてしまって、以来一緒に下校することにした。

 実を言うと彼女のことはそれまでは、初プレイ時にいわれた数々の罵倒の台詞を根に持ってい
たせいで、あまりいい印象がなかったのだが、そんなことも水に流そう。
デートもわりと順調に事が運び、仲も徐々に進展し、夏休みはいくつもの思い出をつくることができた。
好きなデートスポットも攻略本でチェックしてあったので、失敗はなかった。
こうして、私は実生活では全く無縁だった、輝ける青春の日々を体験していたのだった。笑わないで
欲しい。人間やっぱり幸福や優劣の差はあるものだ。好きでこんな事をしているわけじゃない。
秋の文化祭では、展示を見学に来てくれたし、冬はスキーにも行った。が、クリスマスパーティは故
あって参加しなかった。そして初詣は、成績が上がるよう祈願した。でも、バレンタインデーにあの
女を紹介しないで欲しかったな。

春 公園で思いで話をする。夏は、神社でひもくじをする。射的でも、輪投げでもない。
秋、修学旅行は一緒に見学しないかと誘われる。沖縄の首里城跡をみて「日本の文化と大陸の文化
が一緒になった所ね」といった旨のことを言われる。どうやら日本史も得意科目のようだ。それなら
自分と同じだと益々好感をもつ。
こうして3年生になる。もう誰も出てこないのでパラメータは上げ放題だとばかりに、堰を
切ったように運動、文系学習、芸術活動と、八面六臂の活動をし、テストも堂々の一位。
詩織ももう不服はなさそうだ。

夏、プールにいってイベントをみる。合宿では、奥義を授かり、遊園地ではナイトパレードを観る。
そして、秋の番長との果たし合いは奥義「戦闘衛星ハッキング」(PSやSSとは違うのだよ)
によって余裕で勝利を収める。もうすべてにぬかりはなかった。そして、秋の公園での
イベントで、過去のノスタルジーに浸ると同時にこんな関係ももうすぐ終わりだなと一抹の不安を
覚える。もうすぐゲームが終わる、高校生活も終わると思うと、なんだかもの悲しい気分に
なったのだった。

冬、例年通り初詣に行く。今年はいよいよ卒業だ。間違いなく告白を受ける事ができるだろう。
新学期早々に遊園地に行く。最後のイベント観覧車の故障を見る。「だってわたしあなたのことが・・」
続きを聞きたかったが、それではゲームが終わってしまう。卒業まであと少しだから、それまではと
それ以上の追及はしないことにする。そしてバレンタインは去年と同じ本命チョコをもらう。
卒業まであと二週間・・・・って旅立ちの詩と同じか。
2月末一流大学を受験。結果は勿論合格。

卒業の日を迎える。そして、あの場所に詩織は立っていた。
そして・・・・・・・・・・
念願の告白を受けることが出来た。
同じ大学に幼なじみの彼女がいるなんていいな。と主人公を羨みながらのモノローグ、でも永遠の
愛なんて・・・・・・と一歩引いてしまう自分を発見する。
 
「愛は絶えず生まれ変わるもの。生まれた愛は、その時だけ輝くのだ。その意味では、
永遠でなく、また、永遠であるとも言える。」  
「センチメンタルジャーニー」第六話の和尚の言。

感動のエンディングを迎えて、筆者は久々にゲームはまだまだ面白くなるという確信を持つと
同時にこれは本当にゲームなのだろうかと疑問に思った。ゲームと認識した時点で虚構の世界の
出来事なのに、このゲームは映画や小説のように2次元の世界で、本物の恋愛をつくりだそう
としていると感じたのである。されど、いかに両想いになろうともゲームが終わればなにも残らない。
テレビの前に孤独な自分がいるのみである。
ときめきの呪縛から逃れた筆者にはもう、この頃のような衝撃も感動も甦らない。
別のゲームがそれをもう一度味あわせてくれるか、別のことがそんな充足感をくれるのか。
二つに一つである。
初めて味わった衝撃や感動をもう一度味わいたい。それが恋愛ゲームの中毒性、習慣性というものであり、
いくつもの恋愛ゲームに手を出してしまう習性であり、ユーザー層が一部に限られている所以でもある。

 

第一章

 

完  

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